夜になるまえに

本の話をするところ。

2025-05-01から1ヶ月間の記事一覧

Shudder Originalの未公開作品を三本紹介してみる。

Shudderという配信サービスがある。残念ながら日本からは契約できないのだが、主にホラーを扱う配信サービスで、オリジナルの映画やドラマを制作してもいる。このオリジナル作品、いくつかは日本でも公開されているのだが、なかなかのラインナップなのである…

気になる未邦訳作品Fear Streetシリーズより”The Confession”

今回ご紹介するのは、ご長寿YAホラーシリーズ"Fear Street"の一冊”The Confession”。 クラスメイトのアルが死んだ時、ジュリーとその友人たちは、心が砕けてしまったとはいえない。アルには我慢ならなかったし、ならずその死を願いさえしたからだ。しかし他…

会ったことのない人をなつかしむこと「八本脚の蝶」

「これから泳ぎにいきませんか」という、なんとも謎めいて魅力的なタイトルの本がある。穂村弘による書評集だ。読んでいると、このタイトルが、ある人物から実際に投げかけられたことばであることが判明する。その人と穂村は、夕食を食べながら仕事の打ち合…

気になる未邦訳作品””Our Missing Hearts”

今回ご紹介するのは、今注目の作家、セレステ・イングの長編第三作、”Our Missing Hearts”。 12歳のBird Gardnerは愛情深い父と共に静かに暮らしている。父は以前言語学者だったが、今は大学図書館で棚に本を並べている。 中国系アメリカ人で詩人の母マーガ…

ギリアン・フリンのたくみな語り「カーターフック屋敷へようこそ」

ギリアン・フリン、と聞いてあなたが思い出すのは何だろうか。 代表作といえばなんといっても『ゴーン・ガール』だろう。数々の賞にノミネートされ、刊行の翌年にデヴィッド・フィンチャー監督による映画も公開されて話題を集めた。その後デビュー作『KIZU―…

気になる未邦訳作品”Under the Whispering Door”

今回ご紹介するのは、日本でも『セルリアンブルー 海が見える家』(金井真弓 訳、オークラ出版)が出版されているT.J.クルーンの”Under the Whispering Door”。シリーズ作品も多数発表しているクルーンだが、本人のサイトを見ると、こちらは独立した作品らし…

『のすたるじあ』からお気に入りを三編選んでみる。

江戸川乱歩が激賞し、星新一が「あきらかに城さんの影響を受けている」(p.125)と語った作家、城昌幸。独特の詩情をたたえたその作品群が、『みすてりい』『のすたるじあ』の二冊に収められ、同時発売された。 ここではそのうちの一冊『のすたるじあ』から…

気になる未邦訳作品:エドガー賞短編部門受賞作”Eat My Moose”を一部読んでみた

アメリカ探偵作家クラブが毎年優れたミステリーに授与するエドガー賞(アメリカ探偵作家クラブ=Mystery Writers of Americaの頭文字をとってMWA賞ともいう)の受賞作が先日発表された。短編部門の受賞作はエリカ・クラウスによる一編、“Eat My Moose”だった…

『だから捨ててと言ったのに』からお気に入りを三編選んでみる。

このシリーズが好きだ。 本書は『黒猫を飼い始めた』に始まる講談社刊行のアンソロジーシリーズの第四弾である。アンソロジーのテーマはいずれも、最初の一行が共通しているということ。その共通する最初の一行が各巻のタイトルになっている。つまり本書に収…