ショートショートが好きだ。
一編十ページくらいのものを、他の読書に疲れた時に読む。こういう本は常にキープして、寝る前や通勤時間にちょこちょこと読むようにしたいのだが、読み始めるとするすると読めて、結局いつのまにかトータルで三百ページくらい読んでいる、ということもある。
今回は、そんなショートショートのアンソロジーのなかでも一話が五ページ程度と短めのミステリーを集めた「驚愕の1行で終わる3分間ミステリー」から、お気に入りを五篇選んでみた。
「ボツにした取材」高野結史
かつて起きた凄惨な事件について取材中の記者。事件の関係者の言葉から、真相を解き明かしてはいけない。なぜならば、真相を知ってしまった時、あなたは…。
事件の真相ははっきりとここに書かれているわけではない。しかし、注意深く本編を読んでいればたどり着くことは十分可能である。そして筆者は一体どういうことが起こってしまったのかわかってしまった人間なのだが、ええと、この先どうすればいいんでしょうか。フェアな手がかりを織り込んであるミステリーとしての部分と、怪談としての部分が素晴らしく融合した一編。
「アウトレットでつかまえて」ろきすがや
ショッピングモールで通り魔殺人が発生。主人公は周りの人々と共にどうにか脱出しようとするが…
読者を無理なくある方向に誘導し、その後できれいにそれをひっくり返す。どんでん返しものショートショートのお手本のような作品。キーワードも気が利いていていい。これは覚えておこう。
「運び屋の免許更新」柊悠羅
拘束された極秘組織の構成員が尋問を受ける。尋問側のちょっとした言葉の端々をとらえて、構成員は反撃に出ようとする。
相手が漏らした情報を利用して形勢逆転に出ようとする、尋問中のやりとりがちゃんとしていて、シリアスに読み進めたらこのラスト。最後まで読むとにっこりしてしまう一編。なるほどなるほど、彼らも免許制なのね。
「ルーティン」越尾圭
ルーティン通りに機械的な生活を送る男。ある時ルーティンの一つであるジョギング中に血を流した男を見つけるが。
朝目を覚ました時から何をするのかが全部決まっていて、それに従わないと落ち着かない。そういう男がいて、そのルーティンを崩すものに出会ってしまったら、彼は一体いかに自らのルーティン生活を守ろうとするか。視点を変えればホワイダニットものにもなるだろう。なんにせよ、うっかり出くわしたくない迷惑な男だ。
「田中突然死回避計画」三日市零
同級生の田中が死ぬたびにタイムリープが発生、田中が死ぬ前に戻ってしまうことに気づいた俺は、どうにか田中の死を回避してタイムリープを止めようとするが…。
主人公が田中を死なせまいと涙ぐましい努力をして、ついに迎えたその日に悟った恐ろしい真実とは。五ページの中にタイムリープの終わりが見えない絶望感を刻み付けた一編。タイムリープから抜け出そうと必死の努力を重ねてきた主人公が不憫である。この後一体どうすればいいの。
さらっと読める楽しい一冊でした。ショートショートが好きな方はどうぞ。
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