さて、いざふたたび会場へ。あたりまえだがたくさんのブースが並んでいる。そしてたくさんの人たちがそれを見ている。女性が多いようだ。そして若者も。これがみんな、多かれ少なかれ韓国文学に興味のある人なのか。すごい熱気だ。みんな本を抱えている。しかし私は今家に本を積みに積んでいる身である。何より今は旅行中。やたら荷物を増やすわけにはいかない。ここは面白そうな本のタイトルを確認するくらいにしよう。
と、決心した。はずだった。それなのに会場を離れるころには、私は六冊の本を抱えていた。な、なぜだ……。いや、わかっている。私が悪いのではない。K-Bookフェスティバルに魔が潜んでいるせいなのだ。
なにせあちらでもこちらでもブースに作家や翻訳者がいて、著書/訳書にサインしますよ、と言っている。その他にも、今この会場でしか買えない新作ですよ、とか、この会場だけの特典がつきますよ、とか……こんなもん買うしかないではないか。
中でもアストラハウスさんときたら。翻訳者の古川綾子さんがブースにいたので、あいさつをさせていただきつつ、新作「ヘルプ・ミー・シスター」にサインをしていただく。わあ、うれしい……! だがそれだけでは終わらない。本の購入者は、じゃんけんでアストラハウスさんに勝ったらもう一冊、アストラハウスの本をゲットできるのだ!
え、ええ……そんなこと、ある……? と思いながらじゃんけんをする。勝った。「夜の潜水艦」ゲットである。
なんてことだ。本が(時には買ってもいないのに)次から次へと増えていく。K-Bookフェスティバル、お、恐ろしいところだ……
そうやって会場をうろうろしているとたちまち時間は過ぎ、参加しようと思っていたイベントの時間が近づいたので、一階上のイベント会場へ。前の方の席で「대구에서 왔습니다-大邱の出版社・書店、そして著者がやってきました!」を聞く。韓国の大邱からはるばるやって来た出版社・書店のひとびとが、自分たちがどういう本を作っているのか、どういう書店を経営しているのかを語るイベントだ。韓国語の語りの後に日本語の通訳があるのだが、時々日本語の通訳が入る前に韓国語に反応した笑いが起きることがあった。もちろん韓国の人たちもいるのだろうけれど、韓国語を学習している日本人もいるのだろうな、などと思う。今日本で、英語以外の言語で最も学習されているのはきっと韓国語だ。
自身も大邱で「旅行者の本」という書店をやっている司会の方が絶妙なユーモアでイベントを進行していく。今回のK-Bookフェスティバルに持っていく本をスーツケースにぎちぎちに詰めたら重量オーバーになってしまった話など、ご自身のお話も面白い。聞いていると大邱に出かけたくなるイベントだった。
このイベントの模様はこちらから見ることができる。
ここで一日目はおしまい。二日目に続く。