アメリカ探偵作家クラブが毎年優れたミステリーに授与するエドガー賞(アメリカ探偵作家クラブ=Mystery Writers of Americaの頭文字をとってMWA賞ともいう)の受賞作が先日発表された。短編部門の受賞作はエリカ・クラウスによる一編、“Eat My Moose”だった。調べてみたところ、一部がオンラインで無料で公開されている。
物語の主人公はビジネスとしてこれまでに数多くの仕事を請け負ってきた。その仕事とは、余命わずかな人々が人生に終止符を打つ手助けをすること。
公開されている部分を読んだ限りでは、派手などんでん返しが待つトリッキーな作品というよりは、犯罪に手を染めることになってしまった人間のドラマを描く物語のようである。完全版を読むには掲載紙であるConjunctions82号か、本作を収録した著者エリカ・クラウスの短編集“Save Me, Stranger”を購入する必要がある。
著者エリカ・クラウスはパートタイムの私立探偵としての顔も持ち、フットボール選手による性的暴行事件の捜査に加わった時のことを書いた“Tell Me Everything: The Story of a Private Investigation”でも実際の事件部門でエドガー賞を受賞している。
“Come Up and See Me Sometime”が『いつかわたしに会いにきて』として邦訳されたが、残念ながら現在品切れ状態である。
ちなみに今年の短編部門候補作のうちAriel Lawhon作“Barriers to Entry”とマーガレット・アトウッド作“Cut and Thirst”は多聴多読マガジン4月号のコラムで紹介している。どちらもとてもよくできた作品なのでぜひ。