今回ご紹介するのは、オーシャン・ヴオンの新作”The Emperor of Gladness”。
世界でいちばん難しいのはたった一度の人生を生きることだ…
コネチカット州の脱工業化した街、イースト・グラッドネスで、夏も終わりかけたある夜、十九歳のハイはたたきつけるような雨の中、橋のへりに立ち、今にも飛ぼうというところで、誰かが川の向こうで叫んでいるのを聞いた。声の主はグラジナ、認知症に苦しむ高齢の未亡人で、彼を説得し、別の道を選ばせる。やる気をくじかれ、他に選択肢もなく、ハイはすぐに彼女の世話人になる。その後の一年にわたって、似ても似つかないふたりは、人生を変えるような絆を育んでいく。共感と、精神への罰、心やぶれる出来事の上に築かれたその絆は、自分自身と、家族、危機的状況にあるコミュニティとハイの関係を変える力を持っている。
つい最近大型書店の洋書コーナーを見る機会があったのだが、そこで積まれていたのがこの本だった。オプラ・ウィンフリーに賞賛され、ブッククラブの課題図書にも選ばれている。
著者オーシャン・ヴオンは"TIME IS A MOTHER""NIGHT SKY WITH EXIT WOUNDS"という二冊の詩集を発表した後、長編小説”ON EARTH WE'RE BRIEFLY GORGEOUS”が全米図書賞にノミネートされるなど高い評価を受けた。こちらは『地上で僕らはつかの間きらめく』として木原善彦による邦訳がある。