夜になるまえに

本の話をするところ。

2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧

笑えない現実を笑わなければ「すこし痛みますよ ジュニアドクターの赤裸々すぎる日記 」

私は笑う。先輩医師が赤ちゃんの母親にかけたほめ言葉を自分が言われたのだと勘違いするくだりで。 私は笑う。食事を共にした祖母に顔を拭われた時、それが患者の血だと気づきながら黙っておくことにするところで。 私は笑う。なくなったガーゼをみんなで血…

気になる未邦訳作品第十回"ALONE IN SPACE: A COLLECTION BY TILLIE WALDEN"(著:TILLIE WALDEN、出版社:Avery Hill Pub)

「are you listening? アー・ユー・リスニング」の日本語版が刊行されたばかりのティリー・ウォルデンは、他にも「ウォーキング・デッド」のユニバースを舞台にした”Clementine”などなど日本への紹介が進んでほしいものが多い。ここではそのうちの一冊を紹介…

気になる未邦訳作品第九回"Husband Material"(著: Alexis Hall、出版社:Sourcebooks Casablanca)

「ボーイフレンド演じます」でルークとオリヴァーは出逢い、恋に落ちたふりをし、本当に恋に落ち、傷ついた心と失望と家族の友人たちに向き合い…そしてどうにかうまくやっていく道を見つけた。今や周りの誰もが結婚しているようで、ルークはプロポーズしなけ…

気になる未邦訳作品第八回”The Skin and Its Girl”(著:Sarah Cypher、出版社:Ballantine Books)

パレスチナにあるRummani家の故郷から遠く離れたパシフィック・ノースウェストの病院で、死産だった赤ん坊の心臓が動き出し、その肌は鮮やかなコバルトブルーに染まった。同じ日、ナブルスに何百年も前からあるRummani家の石鹸工場が空爆で破壊される。一族…

言葉を知ることとは「おばあちゃんは猫でテーブルを拭きながら言った」

言語を知ることは、歴史を知ることだ。あなたがその言語に誠実であろうとするならば。 その昔、日本では――恐らくは、世界でも――解する人が極めて少ないであろう言語を学んだ人の話を聞いたことがある。少数民族の人々の間で話されてきたその言語を習い覚える…

気になる未邦訳作品第七回” The First to Die at the End”(著:Adam Silvera、出版社:Quill Tree Books)

真夜中過ぎに電話でその日死ぬ人間に死を予告するサービス〈デス=キャスト〉。そのサービス開始前夜、誰もが抱える疑問があった。実際に〈デス=キャスト〉は死を予知しているのか、それとも壮大なヤラセなのか? 深刻な心臓の疾患を抱え、何年も自分の死を告…