2024-01-01から1年間の記事一覧
全米図書賞のフィクション部門の候補作はすべて紹介した。今回ご紹介するのはYA部門の” Kareem Between”。 七年生が始まり、Kareemは既にへまをした。 親友は引っ越し、フットボールの入部テストでしくじり、ルーツのために新入生ー恥ずかしいくらいなまって…
ジェレミー・ドロンフィールドがノンフィクションを書いた。 その知らせを最初に聞いた時、自分の聞いたことが理解できなかった。私にとってジェレミー・ドロンフィールドという作家は、『飛蝗の農場』という、異様な迫力を持った怪作にして傑作の作者であり…
荒野で一人農場を営むキャロルのもとに、謎めいた男が現れて一夜の宿を乞う。彼にけがを負わせてしまったキャロルは、回復するまで男を農場に滞在させることにする。スティーヴンという名前らしいと判明するものの、自分の過去を思い出せないという男。キャ…
全米図書賞フィクション部門ファイナリストに入った作品を紹介するシリーズその4です。 その1からその3はこちら↓ saganbook.com saganbook.com saganbook.com また、過去に投稿した、候補作の一つ”Martyr!”の紹介記事はこちら↓ saganbook.com 今回ご紹介する…
全米図書賞フィクション部門ファイナリストに入った作品を紹介するシリーズその3です。 その1,その2はこちら↓ saganbook.com saganbook.com 今回ご紹介するのは、’Pemi Agudaの”Ghostroots”。 "Manifest"では、ある女性が、娘の顔に自分を虐待した母親の…
イベントに出ます。 その1 ガチョウの本 イーユン・リー 著 篠森ゆりこ 訳 その2 危険なトランスガールのおしゃべりメモワール カイ・チェン・トム 著 野中モモ 訳 その3 別れを告げない ハン・ガン 著 斎藤真理子 訳 イベントに出ます。 10月26日、…
全米図書賞フィクション部門ファイナリストに入った作品を紹介するシリーズその2です。 その1はこちら↓ saganbook.com 今回ご紹介するのは Percival Everettの”James”。 奴隷にされたジムは、妻と娘から永遠に切り離されてニューオーリンズの男に売られる…
筆者はアリス・オズマン作のグラフィックノベル「HEARTSTOPPER ハートストッパー」及びそのドラマ版のファンである。めでたいことに日本でもどちらも人気を博し、更にめでたいことに、近年オズマン作の小説の邦訳が相次ぎ、ドラマ版は先日シーズン3の配信が…
全米図書賞のファイナリストが発表された。ロングリスト十冊から半分の五冊に絞り込まれた中に、”Martyr!”を見つけて微笑んでしまった。当ブログで紹介済みの一冊である。 saganbook.com 11月20日の受賞式までに、フィクション部門でファイナリストに選出さ…
来る9月8日に開催される文学フリマ大阪12に出店します。 bunfree.net ↓こちらはWebカタログです。「左岸 Life for Books」という名前で登録しております。 c.bunfree.net 今回は久しぶりにコピー本ではない新刊を持っていく予定です。 その名も、「あなた…
ショートショートが好きだ。 一編十ページくらいのものを、他の読書に疲れた時に読む。こういう本は常にキープして、寝る前や通勤時間にちょこちょこと読むようにしたいのだが、読み始めるとするすると読めて、結局いつのまにかトータルで三百ページくらい読…
すっかり忘れてしまっていた傷があり、今も毎日の暮らしの中でうずいている傷がある。どんな種類のものにしろ、必ず傷はそこにある。 本書には十の短編が収められているが、各編の主人公は皆、なんらかの傷を負ったことのある人たちだ。彼らは決して、何かを…
『百年の孤独』が文庫化で話題になっているため、これまで三回にわたって、あわせて読んでほしいラテンアメリカ文学を紹介してきた。 saganbook.com saganbook.com saganbook.com 今回は番外編として、ある程度ラテンアメリカ文学に親しんできた人に読んでほ…
プライド月間である六月に、Xで「PrideMonth2024」というハッシュタグで一日一件クィア・ストーリーを投稿するという試みをした。せっかくなのでこちらにも残しておこうと思う。 6月1日 「イエルバブエナ」ニナ・ラクール/吉田育未訳、オークラ出版 荒れ果…
ついに文庫化されて今話題を呼んでいる『百年の孤独』。この機に乗じてラテンアメリカ文学をおすすめしたい…!と思って記事を書いた。 saganbook.com saganbook.com 今回も更なるおすすめラテンアメリカ文学を紹介したいと思う。 1.『ペドロ・パラモ』フア…
1985年、シカゴにあるアートギャラリーのデベロップメント・ディレクターであるYale Tishmanは見事な手腕を発揮し、1920年代の絵画の素晴らしいコレクションがギャラリーに寄贈されようとしている。しかし彼のキャリアが花開き始めたころ、周囲ではエイズの…
『百年の孤独』の次に読んでほしいラテンアメリカ文学 第二弾です。
Amandaという名の若い女性が地方の病院で死にかけている。Davidという名の少年がその傍らに座っている。彼女は彼の母親ではない。彼は彼女の子どもではない。ふたりは共に、壊れた魂、毒、家族の力と絶望についての、頭に取りついて離れないような物語を語る…
『百年の孤独』の次に読んでほしいラテンアメリカ文学を紹介します。
先日、国際ブッカー賞候補作ショートリストが発表された。最初十三作だった候補作品が絞られ、六作品が残った。 thebookerprizes.com 国際ブッカー賞候補作が発表されてからずっと候補作のあらすじを紹介し続けてきたが、今回はショートリスト入りした二作品…
国際ブッカー賞候補作紹介、今回はベネズエラ出身の作家Rodrigo Blanco Calderónによる"Simpatía"。 “Simpatía” の舞台はニコラス・マドゥーロ政権下のベネズエラ、多くの知識階級の人々がペットを置き去りにして出国していたころ。主人公の映画ファンUlises…
「嘘をついたのは、初めてだった」という一文から始まる二十九編の短編を集めたアンソロジー「嘘をついたのは、初めてだった」。同趣向の「黒猫を飼い始めた」に続く第二弾である。今回は本書からお気に入りを五編紹介したいと思う。 ※掲載順に並べてある。 …
国際ブッカー賞候補作の紹介、その七です。 今回はペルー出身で現在はマドリードに拠点を置いているGabriela Wienerの作品、”Undiscovered”。 パリの民俗博物館でGabriela Wienerは、自身の受け継いだふつうではない遺産に直面していた。彼女が見ているのは…
国際ブッカー賞候補作の紹介、その六です。今回はポーランドの詩人の小説デビュー作”White Nights”です。 詩人Urszula Honekのデビュー短編集”White Nights”はポーランド南部のBeskid Niski地域のある村で成長し暮らしている(いた)人々を襲うさまざまな悲劇…
国際ブッカー賞候補作の紹介、その五です。今回はドイツの作家ジェニー・エルペンベックの"Kairos"。 ベルリン、1986年7月11日。ふたりは偶然バスで出逢った。彼女は若き学生、彼は年上で既婚者。共有する音楽と芸術への愛に煽られ、守らなければならない秘…
国際ブッカー賞候補作を紹介するシリーズ第四弾です。 国際ブッカー賞候補作を紹介するシリーズはこちらから↓ saganbook.com saganbook.com saganbook.com 今回紹介するのはスウェーデンの作家Ia Genberg による”The Details”。 有名アナウンサーによる忘れ…
国際ブッカー賞候補作を紹介するシリーズ第三弾です。 国際ブッカー賞候補作を紹介するシリーズはこちらから↓ saganbook.com saganbook.com 今回紹介するのはイタリアの作家、Veronica Raimo作”Lost on Me”。 Veroはローマで風変わりな家族と共に育った。ど…
先日発表された国際ブッカー賞候補作から一冊をご紹介します。 邦訳のある作家の作品ばかり三冊を紹介した第一弾はこちら。 saganbook.com もし双子の片割れがこれ以上生きることを望んでいなかったら?もしもう一人が、片割れなしで生きて行けなかったら? …
国際ブッカー賞2024候補作から三作品を紹介します。
ガブリエル・ガルシア=マルケスの言わずと知れた名高い短編「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」を読んだ時、私にはわからないことがあった。 エレンディラはどうして自分で祖母を殺さないのだろうか? 「無垢なエレンディラと無情な…