夜になるまえに

本の話をするところ。

エッセイ

私たちを世界へ連れて行くもの「千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話」

告白しよう。著者をずいぶん前から知っていた。いや、実生活で会ったことがある、話したことがある、そういう意味ではない。あくまで一方的に知っていた。「Twitterで時折流れてくる、熱量のこもった未公開映画ツイートの主」として。ルーマニア語で小説を発…

ちいさな幸せを「まぬけなこよみ」

エッセイが好きだ。しかし、好きな小説よりも、好きなエッセイを見つける方が難しい、と思うくらいには、好みに偏りがある。文章はもちろん、時には小説よりもよほど強く感じとれる、書き手の価値観、のようなものが肝心なのだと思う。好きな感じのエッセイ…

考えることをやめないこと「言葉の展望台」

コミュニケーションとは、何だろうか。 本書のプロローグで、著者はコミュニケーションをこう定義する。 「誰かが何かをしたり、言ったりすることで何かを意味し、別の誰かがそれを理解したときに成立するもの、それを「コミュニケーション」と呼ぼう」(pp.…

問い続け、考え続けるために「水中の哲学者たち」

押していただけたらうれしいです! ランキング参加中読書 これは寝る前に読みたい本だな、と思った。どんな本を「寝る前に読みたい本」だと思うのか、と訊かれても説明するのは難しいのだが、たぶん少しずつ少しずつ、何日もかけて読める、あるいは読みたい…

書けない文章を書く作家「しらふで生きる」

世の中には書けそうで書けない文章というものがあるし、書けなさそうで書けない文章もある。本書の著者、町田康の文章は間違いなく後者である。 本書からいくつか例を挙げよう。 というのは、組織・団体には必ず設立の目的というものがある。つまり、「回転…

床に転がるほどの愛「裸一貫! つづ井さん」

突然だが、あなたは成人してから床に転がって暴れ回ったことがあるだろうか。私はない。記憶に残らないくらい幼い時分は知らないが、記憶にあるかぎりは子どもの時にだってない。実際に成人が床に転がって同じ言葉をくり返しながら暴れる場面を目にしたら、…

うらやましいふたり「胃が合うふたり」

「胃が合うふたり」は、「ちはやん」「新井どん」と呼び合う作家と書店員、近しい友人同士であり何よりも「胃が合う」ふたりが、一緒に食べたものについておのおの書いたエッセイを収めた、それぞれの個性が表れる文章が味わい深い一冊である。 うらやましい…