夜になるまえに

本の話をするところ。

未邦訳

気になる未邦訳作品〜国際ブッカー賞候補作編⑧〜

国際ブッカー賞候補作紹介、今回はベネズエラ出身の作家Rodrigo Blanco Calderónによる"Simpatía"。 “Simpatía” の舞台はニコラス・マドゥーロ政権下のベネズエラ、多くの知識階級の人々がペットを置き去りにして出国していたころ。主人公の映画ファンUlises…

気になる未邦訳作品第三十四回は”We Are Okay”(著者: Nina LaCour、出版社:Dutton Books for Young Readers)

あなたは必要なものがたくさんあると思いながら人生を体験する…それも電話と、財布と、母親の写真だけを持って旅立つ時までだ。すべてを置き去りにした日からMarinは昔の人生に関係のある人とは誰とも口をきいていない。あの最後の数週間の真実を知る者はい…

気になる未邦訳作品第三十三回は”Somewhere Beyond the Sea”(著者: TJ Klune、出版社:Tor Books)

魔法の家。秘密の過去。何もかもを変えてしまいかねない召喚。 アーサー・パルナッサスが生きているよき人生は、酷い人生の灰の上に築かれたものだ。 彼は遠く離れた風変わりな島にある奇妙な孤児院の長であり、まもなく孤児院に暮らす六人の危険で魔法を持…

気になる未邦訳作品第三十二回は”Ninth House” (著者:Leigh Bardugo、出版社:Gollancz)

Galaxy ‘Alex’ Sternはイェール大学新入生クラスのもっとも「らしくない」メンバーだ。学校は中退し、恐ろしい未解決事件の唯一の生き残りでもあるAlexは新たなスタートを切ることを望んでいた。しかし世界で最も権威ある大学の一つにただで入るからには、落…

気になる未邦訳作品第三十一回は”Martyr!”(著者:Kaveh Akbar、出版社:Knopf)

Cyrus Shamsは暴力と喪失の継承に取り組む若者だ。彼の母が乗った飛行機は馬鹿げた事故によりペルシャ湾上空で撃ち落とされた。アメリカにいる彼の父の生活は工場式畜産場で鶏を殺すという仕事に制限されている。Cyrusは酒飲みで、依存症で、詩人であり、殉…

気になる未邦訳作品第二十九回は“Nuestra parte de noche”(著者:Mariana Enriquez 、出版社:Vintage Español)

若い父親と息子が、二人ともが愛していた妻であり母である女性の死に打ちひしがれながら、ロードトリップに出る。悲しみによって結びついた二人が目指すのは彼女の先祖代々の家だ。そこで彼らは、彼女の遺した恐ろしい遺産と向き合わねばならない。不死を探…

気になる未邦訳作品第二十六回は"Resist Stories of Uprising" (編者:Ra Page、出版社:Comma Press)

ブレグジットによって社会的・政治的混乱が引き起こされ、気候危機が無視され続ける今、これらの出来事は民主主義国家として未知の領域に属すると考えるのは簡単だ。 しかし英国はこれまでにも政治危機や極右の過激思想を経験してきた。英国の抵抗運動の鍵と…

気になる未邦訳作品第二十二回は”Tom Lake”(著者:Ann Patchett、出版社: Harper)

押していただけるとうれしいです!↓ ランキング参加中読書 2020年春、Laraの三人の娘たちは北ミシガンにある家族の果樹園に帰ってくる。チェリーを摘みながら、彼女たちは母親にPeter Dukeの話をしてくれるようねだる。Dukeは有名な俳優で、何年も前、Laraが…

気になる未邦訳作品第二十一回”The Lady's Guide to Petticoats and Piracy"(著者: Mackenzi Lee、出版社:Katherine Tegen Books)

押していただけたらうれしいです↓ ランキング参加中読書 偶然にも嵐のようなものになった兄Montyとのグランドツアーの一年後、Felicity Montagueは二つの目標を頭にイングランドへと帰還した――恋に浮かれたエディンバラの求婚者からの結婚の申し込みをかわす…

気になる未邦訳作品第二十回” Answers in the Pages "(著者:David Levithan、出版社:Knopf Books for Young Readers)

押していただけたらうれしいです↓ ランキング参加中読書 Donovanが“The Adventurers”をキッチンカウンターに置きっぱなしにした時、母親がそれを読むとは思っていなかった――ましてやそれを問題視するなんて。だって二人の登場人物が悪の天才を止めようとする…

気になる未邦訳作品第十九回”THIS GOLDEN FLAME"(著者:EMILY VICTORIA、出版社:Hodderscape)

押していただけたらうれしいです!↓ ランキング参加中読書 孤児となり、国の支配層である書記たちに仕えることを強いられているKarisは、遠い昔に国を去った兄を見つけることをほかの何より望んでいる。しかし家族のきずなはScriptoriumにとって何の意味も持…

気になる未邦訳作品第十八回"The Magic Fish"(著者:Trung Le Nguyen、出版社:Random House Graphic)

押していただけたらうれしいです!↓ ランキング参加中読書 本当の人生はおとぎ話じゃない。 でもTiếnはまだ、地元の図書館から借りてきた本に載っているお気に入りのお話しを両親と一緒に読むのが楽しい。子どもとして親とコミュニケーションをとろうとする…

気になる未邦訳作品第十七回”The Thirty Names of Night”(著者:Zeyn Joukhadar、出版社:Atria Books)

押していただけたらうれしいです!↓ ランキング参加中読書 不審な火事によって鳥類学者の母親を亡くして五年、トランスであることをオープンにしていないシリア系アメリカ人の少年は、出生時の名前を捨て新たな名前を探している。彼は祖母の唯一の介護者とし…

気になる未邦訳作品第十六回”Alice Austen Lived Here”(著者:Alex Gino、出版社:Scholastic)

押していただけたらうれしいです!↓ ランキング参加中読書 Samは自らのクィアとしてのアイデンティティに慣れ親しんでいる。Samはノンバイナリーで、親友のTJもそうだ。Samの家族にとってそれはまったく問題のないことだ…ノンバイナリーの子だって部屋を片付…

気になる未邦訳作品第十五回”The Chase”(著者:Candice Fox、出版社:Penguin)

↓押していただけたら嬉しいです! ランキング参加中読書 600を超える世界で最も暴力的な人間たちがプロングホーン刑務所からネバダ砂漠へと解き放たれた時、米国市場最大規模の人間狩りが始まる。 しかしJohn Kradleにとっては、妻と子どもが殺されて五年後…

気になる未邦訳作品第十四回”Notes on an Execution”(著者: Danya Kukafka、出版社:William Morrow)

押していただけたらうれしいです↓ ランキング参加中読書 Ansel Packerはあと十二時間で死ぬ予定だ。自分がやったことはわかっており、今は処刑を待っている。何年も前にあの少女たちに彼が強いたのと同じ、背すじの凍るような運命だ。しかしAnselは死にたく…

気になる未邦訳作品第十三回”The Paris Apartment”(著者:Lucy Foley、出版社:William Morrow Paperbacks)

押していただけたらうれしいです↓ ランキング参加中読書 Jessには再スタートが必要だった。金もなく、ひとりぼっちで、理想的とは言えない状況下で仕事を辞めたばかりなのだ。半分血の繋がったきょうだいBenは、少しの間家に泊まってもいいかと頼まれて喜ん…

気になる未邦訳作品第十二回”The Christmas Guest”(著者:Peter Swanson,出版社:William Morrow)

押していただけたらうれしいです!↓ ランキング参加中読書 Ashley Smithはアートを学ぶアメリカの学生で、大学三年目をロンドンで過ごしている。クリスマスは一人で過ごすつもりだったが、最後の最後で同期のEmma Chapmanから Chapman家の郊外にある屋敷、St…

気になる未邦訳作品第十一回”The Woman in the Library”(著者:Sulari Gentill, 出版社: Sourcebooks)

押してくださるとうれしいです↓ ランキング参加中読書 誰の話にも、隠すべきことはある… 静けさは女性の恐怖の叫びで破られた。警備員がすぐさま指揮をとり、危険の正体が突き止められ、食い止められるまでじっとしているよう、中にいるすべての人に指示した…

気になる未邦訳作品第十回"ALONE IN SPACE: A COLLECTION BY TILLIE WALDEN"(著:TILLIE WALDEN、出版社:Avery Hill Pub)

「are you listening? アー・ユー・リスニング」の日本語版が刊行されたばかりのティリー・ウォルデンは、他にも「ウォーキング・デッド」のユニバースを舞台にした”Clementine”などなど日本への紹介が進んでほしいものが多い。ここではそのうちの一冊を紹介…

気になる未邦訳作品第九回"Husband Material"(著: Alexis Hall、出版社:Sourcebooks Casablanca)

「ボーイフレンド演じます」でルークとオリヴァーは出逢い、恋に落ちたふりをし、本当に恋に落ち、傷ついた心と失望と家族の友人たちに向き合い…そしてどうにかうまくやっていく道を見つけた。今や周りの誰もが結婚しているようで、ルークはプロポーズしなけ…

気になる未邦訳作品第八回”The Skin and Its Girl”(著:Sarah Cypher、出版社:Ballantine Books)

パレスチナにあるRummani家の故郷から遠く離れたパシフィック・ノースウェストの病院で、死産だった赤ん坊の心臓が動き出し、その肌は鮮やかなコバルトブルーに染まった。同じ日、ナブルスに何百年も前からあるRummani家の石鹸工場が空爆で破壊される。一族…

気になる未邦訳作品第七回” The First to Die at the End”(著:Adam Silvera、出版社:Quill Tree Books)

真夜中過ぎに電話でその日死ぬ人間に死を予告するサービス〈デス=キャスト〉。そのサービス開始前夜、誰もが抱える疑問があった。実際に〈デス=キャスト〉は死を予知しているのか、それとも壮大なヤラセなのか? 深刻な心臓の疾患を抱え、何年も自分の死を告…

気になる未邦訳作品 第六回"Senza sangue" (著:Alessandro Baricco、出版社:Rizzoli)

Manuel Rocaの敵たちは彼を追い詰めて殺したが、一番下の娘Ninaが農場の床下に隠れているのに気づかなかった。殺人者のひとり、Titoは、殺人の後でNinaが隠れている場所の上げ戸に気づく。Ninaの非の打ち所がない無垢さに心を打たれた彼は口をつぐんだ。成長…

気になる未邦訳作品 第五回 ” Kentukis”(著:Samanta Schweblin、出版社:Penguin Random House)

Kentukis、彼らはマスコットではない。幽霊でも、ロボットでもない。実在する人々だ――しかし問題は、ベルリンに住む誰かがシドニーにある他人のリビングを悠々歩けるということ、バンコクに住む誰かがブエノスアイレスにいるあなたの子どもたちと一緒に朝食…

気になる未邦訳作品 第四回”The Drowning”(著: T.J.Newman、出版社: Blackstone Publishing)

押していただけたらうれしいです!↓ ランキング参加中読書 離陸した6分後、1421便は海に墜落する。生存者は自分たちを幸運だと思っていた。しかし彼らを内に閉じ込めたまま、機体は海底へと沈み始める…大規模な救出作戦が始まるが、時間はない。酸素も残り少…

気になる未邦訳作品 第三回” The Swimmers” (著:Julie Otsuka 出版社:Anchor)

アリスは認知症が進み、ロッカーの番号やタオルの置き場所も覚えられない。けれど毎日の水泳こそが人生に意味を与えてくれるものだった。しかし通っていたプールが修繕のために閉鎖されてしまう。水泳の習慣から切り離されてしまったアリスは子ども時代と戦…

気になる未邦訳作品 第二回” Mad Honey ”(著者:Jodi Picoult、Jennifer Finney Boylan、出版社:Ballantine Books)

オリヴィアは心臓外科医の夫、美しい息子アッシャーとボストンで完璧な生活を送っていた。しかし夫が秘密にしていた暗い部分を明らかにするとその生活はひっくりかえってしまう。オリヴィアはアッシャーを連れてニューハンプシャーの故郷の町に戻り、生まれ…

気になる未邦訳作品 第一回 ” Las malas mujeres”

これから未邦訳の気になる作品を週一回語っていこうと思う。第一回は” Las malas mujeres” (作:Marilar Aleixandre、出版社:Xordica)。 1863年、スペインのコルーニャ。女子刑務所に収監されているのは、子どもたちに与えようとパンを盗んだ者、これ以上…