夜になるまえに

本の話をするところ。

未邦訳

気になる未邦訳作品”Suicide Club”

今回ご紹介するのは、レイチェル・ヘンのデビュー作、”Suicide Club”。 レア・キリノは<ライファー>だ。つまり、遺伝子のサイコロでいい目を出し、永遠に生きる可能性を与えられたということだ—もしも全部正しくやれば、だが。そしてレアは人並み以上の成功…

気になる未邦訳作品”Come Closer”

本日ご紹介するのは、『探偵は壊れた街で』『探偵は孤高の道を』の私立探偵クレア・デウィット・シリーズなどの邦訳があるサラ・グラン作、”Come Closer”。 普通じゃないことが起こっていると考える理由はなかった。 アパートの奇妙な物音。 衝動的な行動。 …

気になる未邦訳作品”Unwind"

アメリカの第二次シビルウォーの後、プロチョイス派とプロライフ派は同意に至った。彼らの生命法によれば、人間の生命は受胎の瞬間から十三歳までは終わらせてはならない。しかし十三歳から十八歳までの間なら、親は"アンワインディング”というプロセスを経…

気になる未邦訳作品Fear Streetシリーズより”The Confession”

今回ご紹介するのは、ご長寿YAホラーシリーズ"Fear Street"の一冊”The Confession”。 クラスメイトのアルが死んだ時、ジュリーとその友人たちは、心が砕けてしまったとはいえない。アルには我慢ならなかったし、ならずその死を願いさえしたからだ。しかし他…

気になる未邦訳作品””Our Missing Hearts”

今回ご紹介するのは、今注目の作家、セレステ・イングの長編第三作、”Our Missing Hearts”。 12歳のBird Gardnerは愛情深い父と共に静かに暮らしている。父は以前言語学者だったが、今は大学図書館で棚に本を並べている。 中国系アメリカ人で詩人の母マーガ…

気になる未邦訳作品”Under the Whispering Door”

今回ご紹介するのは、日本でも『セルリアンブルー 海が見える家』(金井真弓 訳、オークラ出版)が出版されているT.J.クルーンの”Under the Whispering Door”。シリーズ作品も多数発表しているクルーンだが、本人のサイトを見ると、こちらは独立した作品らし…

気になる未邦訳作品:エドガー賞短編部門受賞作”Eat My Moose”を一部読んでみた

アメリカ探偵作家クラブが毎年優れたミステリーに授与するエドガー賞(アメリカ探偵作家クラブ=Mystery Writers of Americaの頭文字をとってMWA賞ともいう)の受賞作が先日発表された。短編部門の受賞作はエリカ・クラウスによる一編、“Eat My Moose”だった…

気になる未邦訳作品~全米図書賞候補作⑤~

全米図書賞のフィクション部門の候補作はすべて紹介した。今回ご紹介するのはYA部門の” Kareem Between”。 七年生が始まり、Kareemは既にへまをした。 親友は引っ越し、フットボールの入部テストでしくじり、ルーツのために新入生ー恥ずかしいくらいなまって…

気になる未邦訳作品~全米図書賞候補作編④~

全米図書賞フィクション部門ファイナリストに入った作品を紹介するシリーズその4です。 その1からその3はこちら↓ saganbook.com saganbook.com saganbook.com また、過去に投稿した、候補作の一つ”Martyr!”の紹介記事はこちら↓ saganbook.com 今回ご紹介する…

気になる未邦訳作品~全米図書賞候補作編③~

全米図書賞フィクション部門ファイナリストに入った作品を紹介するシリーズその3です。 その1,その2はこちら↓ saganbook.com saganbook.com 今回ご紹介するのは、’Pemi Agudaの”Ghostroots”。 "Manifest"では、ある女性が、娘の顔に自分を虐待した母親の…

気になる未邦訳作品~全米図書賞候補作編②~

全米図書賞フィクション部門ファイナリストに入った作品を紹介するシリーズその2です。 その1はこちら↓ saganbook.com 今回ご紹介するのは Percival Everettの”James”。 奴隷にされたジムは、妻と娘から永遠に切り離されてニューオーリンズの男に売られる…

気になる未邦訳作品~全米図書賞候補作編①~

全米図書賞のファイナリストが発表された。ロングリスト十冊から半分の五冊に絞り込まれた中に、”Martyr!”を見つけて微笑んでしまった。当ブログで紹介済みの一冊である。 saganbook.com 11月20日の受賞式までに、フィクション部門でファイナリストに選出さ…

気になる未邦訳作品”The Great Believers"

1985年、シカゴにあるアートギャラリーのデベロップメント・ディレクターであるYale Tishmanは見事な手腕を発揮し、1920年代の絵画の素晴らしいコレクションがギャラリーに寄贈されようとしている。しかし彼のキャリアが花開き始めたころ、周囲ではエイズの…

気になる未邦訳作品”Distancia de rescate” de Samanta Schweblin

Amandaという名の若い女性が地方の病院で死にかけている。Davidという名の少年がその傍らに座っている。彼女は彼の母親ではない。彼は彼女の子どもではない。ふたりは共に、壊れた魂、毒、家族の力と絶望についての、頭に取りついて離れないような物語を語る…

気になる未邦訳作品〜国際ブッカー賞候補作編⑧〜

国際ブッカー賞候補作紹介、今回はベネズエラ出身の作家Rodrigo Blanco Calderónによる"Simpatía"。 “Simpatía” の舞台はニコラス・マドゥーロ政権下のベネズエラ、多くの知識階級の人々がペットを置き去りにして出国していたころ。主人公の映画ファンUlises…

気になる未邦訳作品第三十四回は”We Are Okay”(著者: Nina LaCour、出版社:Dutton Books for Young Readers)

あなたは必要なものがたくさんあると思いながら人生を体験する…それも電話と、財布と、母親の写真だけを持って旅立つ時までだ。すべてを置き去りにした日からMarinは昔の人生に関係のある人とは誰とも口をきいていない。あの最後の数週間の真実を知る者はい…

気になる未邦訳作品第三十三回は”Somewhere Beyond the Sea”(著者: TJ Klune、出版社:Tor Books)

魔法の家。秘密の過去。何もかもを変えてしまいかねない召喚。 アーサー・パルナッサスが生きているよき人生は、酷い人生の灰の上に築かれたものだ。 彼は遠く離れた風変わりな島にある奇妙な孤児院の長であり、まもなく孤児院に暮らす六人の危険で魔法を持…

気になる未邦訳作品第三十二回は”Ninth House” (著者:Leigh Bardugo、出版社:Gollancz)

Galaxy ‘Alex’ Sternはイェール大学新入生クラスのもっとも「らしくない」メンバーだ。学校は中退し、恐ろしい未解決事件の唯一の生き残りでもあるAlexは新たなスタートを切ることを望んでいた。しかし世界で最も権威ある大学の一つにただで入るからには、落…

気になる未邦訳作品第三十一回は”Martyr!”(著者:Kaveh Akbar、出版社:Knopf)

Cyrus Shamsは暴力と喪失の継承に取り組む若者だ。彼の母が乗った飛行機は馬鹿げた事故によりペルシャ湾上空で撃ち落とされた。アメリカにいる彼の父の生活は工場式畜産場で鶏を殺すという仕事に制限されている。Cyrusは酒飲みで、依存症で、詩人であり、殉…

気になる未邦訳作品第二十九回は“Nuestra parte de noche”(著者:Mariana Enriquez 、出版社:Vintage Español)

若い父親と息子が、二人ともが愛していた妻であり母である女性の死に打ちひしがれながら、ロードトリップに出る。悲しみによって結びついた二人が目指すのは彼女の先祖代々の家だ。そこで彼らは、彼女の遺した恐ろしい遺産と向き合わねばならない。不死を探…

気になる未邦訳作品第二十六回は"Resist Stories of Uprising" (編者:Ra Page、出版社:Comma Press)

ブレグジットによって社会的・政治的混乱が引き起こされ、気候危機が無視され続ける今、これらの出来事は民主主義国家として未知の領域に属すると考えるのは簡単だ。 しかし英国はこれまでにも政治危機や極右の過激思想を経験してきた。英国の抵抗運動の鍵と…

気になる未邦訳作品第二十二回は”Tom Lake”(著者:Ann Patchett、出版社: Harper)

押していただけるとうれしいです!↓ ランキング参加中読書 2020年春、Laraの三人の娘たちは北ミシガンにある家族の果樹園に帰ってくる。チェリーを摘みながら、彼女たちは母親にPeter Dukeの話をしてくれるようねだる。Dukeは有名な俳優で、何年も前、Laraが…

気になる未邦訳作品第二十一回”The Lady's Guide to Petticoats and Piracy"(著者: Mackenzi Lee、出版社:Katherine Tegen Books)

押していただけたらうれしいです↓ ランキング参加中読書 偶然にも嵐のようなものになった兄Montyとのグランドツアーの一年後、Felicity Montagueは二つの目標を頭にイングランドへと帰還した――恋に浮かれたエディンバラの求婚者からの結婚の申し込みをかわす…

気になる未邦訳作品第二十回” Answers in the Pages "(著者:David Levithan、出版社:Knopf Books for Young Readers)

押していただけたらうれしいです↓ ランキング参加中読書 Donovanが“The Adventurers”をキッチンカウンターに置きっぱなしにした時、母親がそれを読むとは思っていなかった――ましてやそれを問題視するなんて。だって二人の登場人物が悪の天才を止めようとする…

気になる未邦訳作品第十九回”THIS GOLDEN FLAME"(著者:EMILY VICTORIA、出版社:Hodderscape)

押していただけたらうれしいです!↓ ランキング参加中読書 孤児となり、国の支配層である書記たちに仕えることを強いられているKarisは、遠い昔に国を去った兄を見つけることをほかの何より望んでいる。しかし家族のきずなはScriptoriumにとって何の意味も持…

気になる未邦訳作品第十八回"The Magic Fish"(著者:Trung Le Nguyen、出版社:Random House Graphic)

押していただけたらうれしいです!↓ ランキング参加中読書 本当の人生はおとぎ話じゃない。 でもTiếnはまだ、地元の図書館から借りてきた本に載っているお気に入りのお話しを両親と一緒に読むのが楽しい。子どもとして親とコミュニケーションをとろうとする…

気になる未邦訳作品第十七回”The Thirty Names of Night”(著者:Zeyn Joukhadar、出版社:Atria Books)

押していただけたらうれしいです!↓ ランキング参加中読書 不審な火事によって鳥類学者の母親を亡くして五年、トランスであることをオープンにしていないシリア系アメリカ人の少年は、出生時の名前を捨て新たな名前を探している。彼は祖母の唯一の介護者とし…

気になる未邦訳作品第十六回”Alice Austen Lived Here”(著者:Alex Gino、出版社:Scholastic)

押していただけたらうれしいです!↓ ランキング参加中読書 Samは自らのクィアとしてのアイデンティティに慣れ親しんでいる。Samはノンバイナリーで、親友のTJもそうだ。Samの家族にとってそれはまったく問題のないことだ…ノンバイナリーの子だって部屋を片付…

気になる未邦訳作品第十五回”The Chase”(著者:Candice Fox、出版社:Penguin)

↓押していただけたら嬉しいです! ランキング参加中読書 600を超える世界で最も暴力的な人間たちがプロングホーン刑務所からネバダ砂漠へと解き放たれた時、米国市場最大規模の人間狩りが始まる。 しかしJohn Kradleにとっては、妻と子どもが殺されて五年後…

気になる未邦訳作品第十四回”Notes on an Execution”(著者: Danya Kukafka、出版社:William Morrow)

押していただけたらうれしいです↓ ランキング参加中読書 Ansel Packerはあと十二時間で死ぬ予定だ。自分がやったことはわかっており、今は処刑を待っている。何年も前にあの少女たちに彼が強いたのと同じ、背すじの凍るような運命だ。しかしAnselは死にたく…