夜になるまえに

本の話をするところ。

気になる未邦訳作品〜国際ブッカー賞候補作編⑧〜

国際ブッカー賞候補作紹介、今回はベネズエラ出身の作家Rodrigo Blanco Calderónによる"Simpatía"。

 

“Simpatía” の舞台はニコラス・マドゥーロ政権下のベネズエラ、多くの知識階級の人々がペットを置き去りにして出国していたころ。主人公の映画ファンUlises Kanは、妻Paulinaから国(と彼のもと)を去るつもりだというだとメッセージを受け取る。UlisesPaulinaの出発に打ちひしがれるのではなく解放感を覚える。他の二つの出来事が彼の人生を更に混乱させる。かつての片想いの相手Nadineの帰還、義父Martín Ayala将軍の死。Ayalaの遺言書で、Ulisesはある任務を託されたことを知るーー義実家の大邸宅Los Argonautasを、見捨てられた犬たちのためのシェルターにするのだ。もし期限内にそれを実現できれば、Paulinaと共に暮らした豪華なアパートを相続できる。

この小説は家族と孤児であることというテーマを中心に置き、シモン・ボリバルからウーゴ・チャベスまで、ラテンアメリカの政治家たちによる権力の濫用に取り組んでいる。翻訳できないSimpatíaというタイトルはシンパシーと魅力の両方を意味し、皮肉にもこうした政治家たちが共通して持っていた資質を表している。モラルに欠け、すべての人間の絆が消えていくような社会で、Ulisesは憐れみのかけらを拾う犬のようだ。あなたは本当に誰を愛しているのか知っているだろうか?本当の意味での家族とは何だろうか?捨てられた犬は神の実在を、あるいは不在の証なのか?Ulisesはポスト・ラブの時代における愛の旅人として知らないうちにこれらの問いを体現する。

 

出版社ページはこちら↓

https://www.sevenstoriespress.co.uk/books/simpatia

 

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