国際ブッカー賞候補作を紹介するシリーズ第三弾です。
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今回紹介するのはイタリアの作家、Veronica Raimo作”Lost on Me”。
Veroはローマで風変わりな家族と共に育った。どこにでもいるようで、自らの心配事に専念している母親、衛生・建築についてのこだわりに支配されている父親、ふたりの関心の中心にいる早熟な天才の弟。大人になるにしたがって、独立する必要がVeroを奇妙でおかしな状況に導く。十五歳でパリに逃げようと試みる(そして失敗する)。付き合って一週間も経たない年上の彼氏の家に、気づかれないうちに棲みつく。メキシコ行きの資金を稼ぐため、まともじゃない(そしてきわめて人気のある)服の売店を開く。なにより、恋に落ちるーー何度も繰り返し、劇的に、そしてしばしば最もありそうにない、かつ不適切な候補者に。
突飛な行動をたくらみ続け、母親の容赦ない追跡方法と罪悪感を抱かせる熟練の技に毎回くじかれたのだから、Veroが自らの正気のために物語を発明して、作家ーーそして嘘つきーーになったとしても何も不思議ではない。
皮肉でかつあたたかく愛情深い声で語られる"Lost on Me"は、(同級生から盗んで首尾よく自分で描いたことにした絵という、Veroの最初の芸術的達成に始まる)ずるさと創造性の不安定な関係を悩ましく探求する。一見シンプルで、その優しさが冷徹な残酷さと相殺される”Lost on Me”は人間観察の傑作である。
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