2023-02-01から1ヶ月間の記事一覧
アリスは認知症が進み、ロッカーの番号やタオルの置き場所も覚えられない。けれど毎日の水泳こそが人生に意味を与えてくれるものだった。しかし通っていたプールが修繕のために閉鎖されてしまう。水泳の習慣から切り離されてしまったアリスは子ども時代と戦…
ラブストーリーという言葉は、どうしてか、ほぼ「ラブ=恋愛」という文脈で使われているようだ。これは奇妙なことだと思う。だって「本が大好き」というのも「ラブ」だろうし、「おかあさんだいすき」というのも「ラブ」だろう。でもそういうことを書いた物…
オリヴィアは心臓外科医の夫、美しい息子アッシャーとボストンで完璧な生活を送っていた。しかし夫が秘密にしていた暗い部分を明らかにするとその生活はひっくりかえってしまう。オリヴィアはアッシャーを連れてニューハンプシャーの故郷の町に戻り、生まれ…
告白しよう。著者をずいぶん前から知っていた。いや、実生活で会ったことがある、話したことがある、そういう意味ではない。あくまで一方的に知っていた。「Twitterで時折流れてくる、熱量のこもった未公開映画ツイートの主」として。ルーマニア語で小説を発…
これから未邦訳の気になる作品を週一回語っていこうと思う。第一回は” Las malas mujeres” (作:Marilar Aleixandre、出版社:Xordica)。 1863年、スペインのコルーニャ。女子刑務所に収監されているのは、子どもたちに与えようとパンを盗んだ者、これ以上…
高校のピラミッドの底辺に位置する平良は、自分とは真逆に頂点に立つ美しい同級生の清居に恋をする――というあらすじを聞いて想像したのとまったく違う話じゃん、というのが最初の正直な感想である。美しく、わがままで、気まぐれな相手に恋をしてしまったが…
ネッテルの文章は静かだ。出てくる人物たちも静かだ。声を荒げる、暴れる、そういうことを、彼らはしない。けれども彼らは、彼らが抱えている孤独は、たぶん地団駄を踏んで泣きわめく、といった、激しい動作で訴えても納得がいくくらいに、深い。孤独。ネッ…