アリスは認知症が進み、ロッカーの番号やタオルの置き場所も覚えられない。けれど毎日の水泳こそが人生に意味を与えてくれるものだった。しかし通っていたプールが修繕のために閉鎖されてしまう。水泳の習慣から切り離されてしまったアリスは子ども時代と戦時中に過ごした日系人強制収容所の記憶に飲み込まれてしまう。疎遠になっていた彼女の娘は手遅れになってから母親の人生に再び足を踏み入れるのだが。
「屋根裏の仏さま」「あのころ、天皇は神だった」のジュリー・オオツカの第三作。第一作の「屋根裏の仏さま」が二〇〇二年、第二作の「あのころ、天皇は神だった」が二〇一一年の出版ということで、ほぼ十年に一作ペースである。
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二〇二二年にはウィスコンシンの学校で、戦時中の日系人強制収容を扱った「あのころ、天皇は神だった」が文学の授業の教材として認められなかったことがニュースになった。この本を教材として認めようとしない委員会と認めてほしい保護者・生徒たちの間で議論が過熱する場面もあったという。この件についてはこの記事が詳しい。
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