夜になるまえに

本の話をするところ。

2024-01-01から1ヶ月間の記事一覧

気になる未邦訳作品第三十一回は”Martyr!”(著者:Kaveh Akbar、出版社:Knopf)

Cyrus Shamsは暴力と喪失の継承に取り組む若者だ。彼の母が乗った飛行機は馬鹿げた事故によりペルシャ湾上空で撃ち落とされた。アメリカにいる彼の父の生活は工場式畜産場で鶏を殺すという仕事に制限されている。Cyrusは酒飲みで、依存症で、詩人であり、殉…

よくしゃべるが語らない小説「アイスネルワイゼン」

主人公はピアノ教師である。三十代、経済的に豊かではなく、どうも恋人との間には問題があるようで、更には親との関係もよくないらしい。主人公は旧友に頼まれた歌手の伴奏の仕事をしぶしぶ引き受けるが、そのためにさんざんな目に遭う。その後友人の家に行…

気になる未邦訳作品第三十回は“A Place for Us”(著者:Fatima Farheen Mirza、出版社:SJP for Hogarth)

インド式結婚式が家族をふたたび集結させようという時、親であるRafiqとLayla子どもたちの選択をよくよく考えなければならない。Hadia。頑固な一番年上の娘で、伝統ではなく愛による結婚をした。Hudaは真ん中の子で、姉の足跡をたどろうとしている。そして最…

正しい生き方を求める「ともぐい」

ある日、山中に住む熊爪という男が、熊に襲われ傷を負った男を見つける。 たとえばそんなふうに、この本のあらすじを書き始めることはできるだろう。しかし、あなたはこの始まりから、どのような物語を想像するだろうか。たとえば熊爪が傷を負った男と友情を…

気になる未邦訳作品第二十九回は“Nuestra parte de noche”(著者:Mariana Enriquez 、出版社:Vintage Español)

若い父親と息子が、二人ともが愛していた妻であり母である女性の死に打ちひしがれながら、ロードトリップに出る。悲しみによって結びついた二人が目指すのは彼女の先祖代々の家だ。そこで彼らは、彼女の遺した恐ろしい遺産と向き合わねばならない。不死を探…