国際ブッカー賞候補作リストが発表された。
ぱっと名前を見るだけでも楽しい。知らない作家の名前があれば、まだまだ知らない作家がいるのだなと思われて楽しいし、知っている作家の名前があれば、昔の知り合いを見つけたような気持ちになる。
今回は邦訳作品のある作家から三作品を取り上げる。
Not a River
三人の男が釣りに出かけ、川のほとりのお気に入りの場所に戻ってくる。何年も前にそこで起きた酷い事故の記憶があるのにもかかわらず。長く蒸し暑い日が過ぎていき、彼らは飲み、料理をし、しゃべり、踊り、過去の幽霊を乗り越えようとする。しかし彼らはよそ者であり、この親密で奇妙な時間は彼らを水の世界の住人たちーー人間そしてそれ以外ーーと争わせる。森が迫り来て、暴力は避けられないように思われるが、更なる悲劇は避けられるのか?
「吹きさらう風」が昨年日本でも刊行されたセルバ・アルマダの2020年の作品。
出版社ページ(スペイン語版)はこちら↓
出版社ページ(英語版)はこちら↓
「吹きさらう風」出版社ページはこちら。
The Silver Bone
1919年、キーウ。ソヴィエトが町を支配していたが、白軍が西側から彼らを脅かしている。誰も隣人を信用せず、レジスタンスの火花は、それがいかなるものであれ、公然とした反乱の火をつけるかもしれない。
Samson Kolechkoの父は殺された。最後に落ちてくるコサックの剣から息子を守って。頭ではなく右耳を奪われ、Samsonは孤児としてあとに残された。父のそろばんのコレクションと共に。
それもフラットが二人の赤軍兵に挑発されるまでのことだった。Samsonはどういうわけか彼らの秘密の計画をはっきりと立ち聞きすることができた。ふたりを妨害したくてたまらないSamsonは、彼と言う人間を形作ることになるーーあるいはコサックの始めたことを終わらせるーー殺人と陰謀の世界に足を踏み入れる。
出版社ページはこちら(英語版)↓
作者は小説「ペンギンの憂鬱」「大統領の最後の恋」、マイダン革命の記録「ウクライナ日記 国民的作家が綴った祖国激動の155日」、ロシアとウクライナの戦争について書いた「侵略日記」が邦訳されているアンドレイ・クルコフ。
A Dictator Calls
1934年6月、ヨシフ・スターリンは、著名な小説家にして詩人、ボリス・パステルナークに電話して、ソヴィエトの詩人オシップ・マンデリシュタームの逮捕について話し合ったと言われている。夢と記録資料のある事実の魅惑的な組み合わせによって、国際ブッカー賞初の受賞者であるイスマイル・カダレが、彼らが言葉を交わした三分間と、近代におけるこの緊迫した、謎めいた瞬間の余波を再構築する。目撃者たち、報道関係者たち、アイザイア・バーリン、アンナ・アフマートヴァら作家たちの語りを紡ぎ合わせて、カダレは権力と政治構造についての、作家と独裁政権の関係についての興味深い物語を語っている。
「夢宮殿」ほかの邦訳があるイスマイル・カダレの作品。ちなみに上記のあらすじにもあるようにカダレは国際ブッカー賞ができて最初の受賞者だが、当時の国際ブッカー賞は特定の作品ではなく作家に与えられる賞だったため、受賞者ではあるが受賞作品はない。
出版社ページはこちら↓
「夢宮殿」出版社ページはこちら↓
日本語で読める作品リンク
「ペンギンの憂鬱」紙の本↓
「ペンギンの憂鬱」電子書籍↓
「ウクライナ日記 国民的作家が綴った祖国激動の155日」紙の本↓
「ウクライナ日記 国民的作家が綴った祖国激動の155日」電子書籍↓
「侵略日記」紙の本↓
「侵略日記」電子書籍↓