夜になるまえに

本の話をするところ。

気になる未邦訳作品~全米図書賞候補作編①~

 全米図書賞のファイナリストが発表された。ロングリスト十冊から半分の五冊に絞り込まれた中に、”Martyr!”を見つけて微笑んでしまった。当ブログで紹介済みの一冊である。

 

saganbook.com

11月20日の受賞式までに、フィクション部門でファイナリストに選出された作品を紹介していきたいと思う。

まずは Hisham Matar作”My Friends”。

 

 ベンガジで育った幼い少年だったある夜、Khaledは奇妙な短い話が語られているのをラジオで聞く。猫に生きたまま食われた男の話だ。そして人生が永遠に変わってしまったという感覚を持つ。言葉の力ーそしてその話の謎めいた作者、Hosam Zowaに取りつかれたKhaledはやがて旅に出て故郷から遠く離れ、エディンバラ大学で知的生活を送ることになる。

 そこで、リビアで知っていた世界から何マイルも離れた開かれた社会に入り込み、Khaledは変わり始める。彼はロンドンでカダフィ政権に反対するデモに参加するが、それが一気に悲劇となるのを目の当たりにする。突然、Khaledは自分が傷ついていて、生にしがみつき、英国を去ることができず、まして生まれた国に戻ることもできないことに気づく。盗聴されている電話で、故郷にいる両親に自分が何をしたのかを告げることさえ、彼らを危険に晒すだろう。

 あるホテルで偶然の出会いによってあの運命的な短編の作者、Hosam Zowaと顔を合わせることになった時、Khaledは人生で最も深い友情に包まれる。その友情は彼を支えるだけでなく、やがてアラブの春が勃発する中で、革命と安全の間の苦痛に満ちた緊張や、家族、亡命、きわめて近しい人たちに反する自我をいかに明確にするかに、彼を立ち向かわせていく。

 

 著者Hisham Matarはニューヨークでリビア系の両親のもとに生まれ、子ども時代をトリポリとカイロで過ごし、成人してからはほぼロンドンに住んでいる。ブッカー賞の最終候補入りを果たした” In the Country of Men”が「リビアの小さな赤い実」(金原瑞人、野沢佳織 訳、ポプラ社)として邦訳されている。

 

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