言語を知ることは、歴史を知ることだ。あなたがその言語に誠実であろうとするならば。
その昔、日本では――恐らくは、世界でも――解する人が極めて少ないであろう言語を学んだ人の話を聞いたことがある。少数民族の人々の間で話されてきたその言語を習い覚えるうちに、その人が学んだのは、その言語だけではなかった。彼らの暮らす国の歴史がいかに多数派から見たもの、多数派によって書き換えられたものであったか、そういったことも必然的に知ることになったという(ちなみに書店で働き始めた後、この人の著書が入荷してきて、不意打ちの再会を驚きまた喜ぶことにもなった)。
このやわらかいタッチのイラストで飾られた短い本が、その少ないページ数の中で行っているのは、世界中から集めた面白い言葉の収集、それだけではない。一ページに収まる文字数で、著者は人々が命がけで守った一冊の本の話をする。少数民族の言語が公用語として認められるまでの道のりを。文字の変遷の歴史を。迫害を受けた人々の物語を。一つの言葉を学ぶためには切り離すことのできない、言語にまつわるあれこれが、そこには垣間見える。世界中の面白いことわざをあつめてその意味を解説する、ごくごくシンプルなつくりではありながら、実はそれにとどまらず一歩踏み込んで、その言葉を使う人たちに想いを馳せることができるようになっている。言葉に興味を持つ第一歩にうってつけの一冊であると言える。
今、言語に関する本として推したい一冊「千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話」の話もこちらでしています↓
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