夜になるまえに

本の話をするところ。

気になる未邦訳作品第二十三回は”Ithaca”(著者:Claire North、出版社:Redhook)

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 十七年前、オデュッセウス王はトロイとの戦争に加わるため、戦える年齢の男を皆連れてイタカ島から船出した。誰一人戻っては来ず、残されたイタカの女たちが王国を動かしていた。

 

 ペネロペはオデュッセウスと結婚した時大人の女性になったばかりだった。彼が生きていた間は、彼女の立場は安泰だった。しかし今、歳月が経つにつれ、彼女の夫は死んだのではないかと言う見方が強くなり、求婚者が訪れるようになった。

 

 誰一人としてオデュッセウスの空の玉座を奪うに足りるほど強くはない――今はまだ。しかし誰もが力の均衡が崩れるのを待ちわびる中、ペネロペは自らの決断がイタカを血なまぐさい内戦に追いやりかねないと知っている。

 

 近年一層盛んに書かれるようになった古典のリトールドは、邦訳されたものだけでも、オデュッセウスが参戦したトロイア戦争に材を採った「女たちの沈黙」(パット・バーカー、北村みちよ訳、早川書房刊)や、魔女キルケを主人公にした「キルケ」(マデリン・ミラー , 野沢佳織 訳、作品社刊)、「変身物語」を女性の立場から語りなおした「覚醒せよ、セイレーン」(ニナ・マグロクリン , 小澤身和子 訳、左右社)など、数多い。本書の作者はなんと「ハリー・オーガスト、15回目の人生 」のクレア・ノースである。毎回独特な設定で文句なく面白い物語を紡ぐノースが、リトールドにどう挑んでいるのかが気になる。続編”House of Odysseus”も既に刊行され、第三作で完結予定とのこと。

 

出版社ページはこちら。

www.hachettebookgroup.com

 

「ハリー・オーガスト、15回目の人生」電子書籍はこちら。紙の本は残念ながら品切れらしい。

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