夜になるまえに

本の話をするところ。

気になる未邦訳作品第二十四回は”COMMON GROUND”(著者: Naomi Ishiguro、出版社:Tinder Press)

 世界を違う目で見るようにしてくれた友だちがいたことがあるか?

Stanにはいた。Charlieという友だちが。ある日偶然Goshawk Commonをサイクリングしていて二人の道は交わった。怖いも知らずで賢く、年上のCharlieは、いじめられていて、父の死以来さまよっているStanの理想そのものだ。CharlieStanに質問をすること、自分の足で立つことを教えてくれた。しかし二人の少年にかくも異なる視点を与える世界で、二人の友情は続くだろうか?

二人が大人になって再会した時、状況はひっくり返っていて、Stanが都市の供するものすべてを楽しんでいる一方で、Charlieはもがいていた。だがStanはかつて忠誠の意味を教えてくれた人のそばにいてくれるだろうか?

 

日本でも近々短編集「逃げ道」が刊行されるナオミ・イシグロの初長編。「逃げ道」は今読んでいるところなのだが、私たちの「日常」から一歩踏み出したところにあるものを書いているような感じがする。幻想とまではいかないが、ちょっとはみ出している感じ、とでも言えばいいだろうか。あらすじを一読したところ、本書はリアリスティックな路線のようだが、「逃げ道」の諸短編に見られるような感覚が顔を出していればいいなあ、などと個人的に思う。

 

出版社ページはこちら。

https://www.tinderpress.co.uk/titles/naomi-ishiguro/common-ground/9781472273338/