夜になるまえに

本の話をするところ。

プライド月間に読みたいクィア・ストーリーズ

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六月はプライド月間ということで、クィアの人々が登場する本の紹介をしていきたいと思う。今回は今おすすめの四冊を紹介する。

 

 「クィア」という言葉についてはこちら。

www.wwdjapan.com

 

 

1.「スピン」ティリー・ウォルデン 有澤真庭 訳 河出書房新社

 

 家族とは距離があり、学校ではいじめられ、ゲイであることが周囲にばれるのではないかと恐怖する。著者ウォルデンが自身の青春時代を描いたグラフィックノベルである。繊細な絵と静かな言葉で作り上げられたページから伝わってくるのは圧倒的なさびしさだ。けれどこのさびしさは、同じようなさびしさをかつて抱えていた人に寄り添ってくれるものだと思う。

 紙の本は品切れ状態だが、電子版は入手可能。

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ティリー・ウォルデンは、最近翻訳が出た「are you listening?」(三辺律子 訳、トゥーヴァージンズ)も素晴らしいので是非。

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ウォルデンの未邦訳作品についてはこちら。

 

arimbaud.hatenablog.com

 

 

2.「ボーイフレンド演じます」アレクシス・ホール  金井真弓 訳 二見書房

 

 ロックスターの両親を持つルークは、ある事情から真面目な弁護士オリヴァーと恋人同士を演じることになる。もちろんここから二人の間に恋が生まれるのだが、ふたりはそれぞれの事情から自分を肯定することができないでいる。相手に嫌われるのが、幻滅されるのが怖い。そんなふたりが、一時的な関係ではなく、ずっと続いていくような関係を築くことがはたしてできるのだろうか。……と書くと非常にシリアスな物語のようだが、この本はそんなふたりの苦闘を、時に心を抉るようなパートを交えながらも、読んでいてとても楽しい物語として描いている。八百ページ近くあるのにもっと読んでいたいと思ってしまう稀有な一冊だ。

 

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(現時点では)未邦訳の続編についてはこちら↓

 

arimbaud.hatenablog.com

 

3.ハートストッパー     アリス・オズマン 牧野琴子 訳  トゥーヴァージンズ

 

 ゲイの少年チャーリーは同じ学校のニックと知り合い彼を好きになるが、自分をストレートだと思っていたニックもまたチャーリーに惹かれていく。偏見を持つ人間との軋轢やメンタルヘルスの問題も描いているが、この物語は何があろうときっと味方でいてくれる相手を見つけたふたりの力強いラブストーリーである。Netflixのドラマ版はセカンド・シーズンが二〇二三年八月三日に配信予定。著者アリス・オズマンは自身もアロマンティック・アセクシュアルであり、同じくアロマンティック・アセクシュアルである少女を主人公にした”Loveless”も書いているのでぜひ読んでほしい(翻訳されますように)。

 

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五巻(英語版)は二〇二三年十一月に発売予定。

 

 

 

関連の過去記事はこちら↓

arimbaud.hatenablog.com

 

4. フィリックスエヴァーアフター ケイセン・カレンダー 武居ちひろ 訳 オークラ出版

 トランスジェンダーのフィリックスは何者かに過去の写真を晒され、犯人を探す過程で自らのアイデンティティに悩み、自分に愛される価値があるのかを疑う。
タイトルはおとぎ話を締めくくる言葉としてよく使われる”happily ever after(末永く幸せに)”をもじったものである。自分がハッピーエンドを迎えられると信じられない人に向かって、あなたは当然幸せになれると力強く宣言する、これはそんな物語だ。

 

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二〇二〇年にはアマゾンでTVシリーズになるという話があったようである。ぜひ実現してほしい。

deadline.com

 

いずれも心からおすすめできる作品である。どうか一度手に取ってみてほしい。