夜になるまえに

本の話をするところ。

異様にどんでんがえしを見破ってしまう私がどんでん返された 「星降り山荘の殺人」

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 皆さんはどんでん返されるのがお好きだろうか。私は好きである。

 だが、哀しいかな、きれいにどんでん返された、という本は、実はあまりない。なぜか。

 見えてしまうのである。

 なぜだろう、本当に小さなことで「あ、来る」とわかってしまうのだ。「ハサミ男」のネタがわかってしまった時は本当に悲しかった。なぜわかってしまったのかは、更なる悲劇を避けるためここでは言わない。「なぜそんなことでわかるんだよ」と自分で自分を詰りたくなるようなごく小さな描写からだった、とだけ言っておこう。絶対に!わかりたくなんて!なかったのに!わかってしまったのだ。これは自慢でも何でもない。だってわかりたくないんだもの。どんでん返されたいんだもの。それなのにわかってしまったんだもの。映画を観ていてもそうで、「あ、これって本当はこういうことなんじゃないかな」と観ている間に思いついた真相は、だいたいにおいて正解である。「衝撃の結末」を予測できる確率は何かに呪われているんじゃないかと思うくらい高い。これは何かの特殊能力ではなかろうか。そんな能力、心の底から要らない。

 そんな私が真相を読んだ時「やられた!」と心の底から思えた稀有な一冊、それが「星降り山荘の殺人」なのだった。

 このきれいにどんでん返される感覚。これ。これだよ。これが好きなんだ。こうしてほしかったんだ。やってくれたな。一瞬で美しくひっくり返された世界を眺めながら私は極めて爽快な敗北感を覚えていた。ミステリーファンなら誰でもある程度そんなところがあるのではないかと思うが、負けるのが好きだ。ミステリーを読む時、最後まで真相がわからないというのはとても幸福なことだと思う。この「負けたあっ!」という幸福、それも不本意にも異様に勝率のいい「どんでん返しもの」において―その幸福を私は決して忘れることがないだろう。

 

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