夜になるまえに

本の話をするところ。

エレンディラがあらかじめ奪われていたもの、フュリオサが私たちにくれたもの

ガブリエル・ガルシア=マルケスの言わずと知れた名高い短編「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」を読んだ時、私にはわからないことがあった。 エレンディラはどうして自分で祖母を殺さないのだろうか? 「無垢なエレンディラと無情な…

ドラマ「作りたい女と食べたい女」シーズン2感想 原作からの変更の意味について

※ドラマ「作りたい女と食べたい女」シーズン2および漫画「作りたい女と食べたい女」の内容に触れています。 はじめに 四つのエピソード 変更の結果は? こちらもどうぞ はじめに 「作りたい女と食べたい女」が好きだ。漫画がまず好きだった。映像化されると…

物語を生きのびた後に「星を編む」

「物語が終わる時」は、その物語に登場した人の人生が終わる時である、とはかぎらない。もちろん物語の結末で死んでしまう人物はいくらでもいるけれども、物語を生き残った人の人生は、その先も続いていく。ごくごくあたりまえのことだ。しかし、その「物語…

気になる未邦訳作品第三十五回は"OH, ¡FELIZ CULPA!"(著者:Iván León、出版社:Editorial Egales)

語られなければ、存在しない。 このように、沈黙のうちに、語られる機会を待っている無数の物語がある。LGBTQI+の人々に対するコンバージョンセラピーにまつわる物語のように。しかしそんなもの、私たちの国に存在するのだろうか? そしてなにより、それら…

我が道にだってでこぼこはある「成瀬は天下を取りにいく」

※本書の結末に触れている部分があります。 我が道を行く、という言葉がある。 成瀬のことである。 成瀬とは、本書に登場する成瀬あかりのことだ。同じマンションに生まれた親友の島崎みゆきいわく、「いつだって成瀬は変だ」。幼いころから走るのも歌うのも…

気になる未邦訳作品第三十四回は”We Are Okay”(著者: Nina LaCour、出版社:Dutton Books for Young Readers)

あなたは必要なものがたくさんあると思いながら人生を体験する…それも電話と、財布と、母親の写真だけを持って旅立つ時までだ。すべてを置き去りにした日からMarinは昔の人生に関係のある人とは誰とも口をきいていない。あの最後の数週間の真実を知る者はい…

寝る前に読みたい「ぱっちり、朝ごはん」

アンソロジーが好きだ。それも、一編が五ページから十ページくらいの、ちいさくまとまった文章がたくさん載っている文庫本なんかがいい。そういう本を寝る前にぱらりぱらりとめくり、いろいろな人のいろいろな声を聞きながら、いつのまにかうとうとしてしま…